厚生労働省ガイドラインにある「副業・兼業」の主な内容をご紹介します!
昨日までは「勤務間インターバル制度」についてご紹介しましたが、今日から3日間は「労働時間と副業」をテーマにお伝えします。
主な内容は、2020年11月に出されました「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」に基づきご紹介します。
まず今日は「副業・兼業」に関する基本的な内容を確認していきます。
副業・兼業とは?
副業・兼業を行うということは、二つ以上の仕事を掛け持つことをここでは想定しています。
副業・兼業は、企業に雇用される形で行うもの(正社員、パート・アルバイトなど)、自ら起業して事業主として行うもの、コンサルタントとして請負や委任といった形で行うものなど、さまざまな形態があります。
なぜ今、副業・兼業を促進するの?
副業・兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効とされています。
また、人生100年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要であり、副業・兼業などの多様な働き方への期待が高まっています。
副業・兼業は認めないといけないの?
副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされており、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが適当です。
副業・兼業を禁止している企業や一律許可制にしている企業は、まずは、原則副業・兼業を認める方向で就業規則などの見直しを行い、労働者が副業・兼業を行える環境を整備しましょう。
副業・兼業における労働者の「メリット」と「留意点」
1 労働者における「メリット」
・離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。
・本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。
・所得が増加する。
・本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。
2 労働者における「留意点」
次の①~⑤の留意点が掲げられています。
①就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要である。
②「職務専念義務」を意識する必要がある。
③「秘密保持義務」を意識する必要がある。
⇒副業・兼業に関して問題となり得る場合としては、自ら使用する労働者が業務上の秘密を他の使用者の下で漏洩する場合や、他の使用者の労働者(自らの労働者が副業・兼業として他の使用者の労働者である 場合を含む。)が他の使用者の業務上の秘密を自らの下で漏洩する場合が考えらます。
⇒そのため、企業としては以下のような取り組みが考えられます。
・ 就業規則等において、業務上の秘密が漏洩する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
・ 副業・兼業を行う労働者に対して、業務上の秘密となる情報の範囲や、業務上の秘密を漏洩しないことについて注意喚起すること
④「競業避止義務」を意識する必要がある。
⇒労働者は、一般に、在職中、使用者と競合する業務を行わない義務を負っていると解されています。
⇒副業・兼業に関して問題となり得る場合としては、自ら使用する労働者が他の使用者の下でも労働することによって、自らに対して当該労働者が負う競業避止義務違反が生ずる場合や、他の使用者の労働者を自らの下でも労働させることによって、他の使用者に対して当該労働者が負う競業避止義務違反が生ずる場合が考えらます。
⇒そのため、企業としては以下のような取り組みが考えられます。
・就業規則等において、競業により、自社の正当な利益を害する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
・副業・兼業を行う労働者に対して、禁止される競業行為の範囲や、自社の正当な利益を害しないことについて注意喚起すること
・他社の労働者を自社でも使用する場合には、当該労働者が当該他社に対して負う競業避止義務に違反しないよう確認や注意喚起を行うこと
⑤1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要である。
3 企業の「メリット」と「留意点」
【メリット】
・労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。
・労働者の自律性・自主性を促すことができる。
・優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。
・労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。
【留意点】
・「必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応」「職務専念義務」「秘密保持義務」「競業避止義務」をどう確保するかという懸念への対応が必要である。
以上となります。
明日は「労働時間の通算方法」、明後日は「労働時間等の管理方法」をテーマに、「副業・兼業」を認めていくにあたってのポイントとなるべく内容をお伝えいたします。
【今日のポイント】
組織の実情を十分に踏まえながら「副業・兼業」を認める方向で検討してみよう!