「勤務間インターバル制度」の導入プロセス『フェーズ1』~『フェーズ4』
昨日は、勤務間インターバル制度の『概要』についてお伝えしました。本日は、勤務間インターバル制度の『導入』についてお伝えします。
本日も厚生労働省「勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル」での内容をご紹介します。
マニュアルの中では『フェーズ1』~『フェーズ4』に分け、導入にあたるプロセスについて触れられており、いわゆる「Plan (計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の『PDCAサイクル』を土台とした労使の話し合いの必要性について触れられています。
同じくマニュアルの中で触れられている『成功のポイント』も併せて記載していますので、ご紹介します。
フェーズ1 制度導入を検討する
(ステップ1)
⇒制度導入に向けた具体的な検討を始める前に、労働時間等に関わる現状把握と課題抽出を行います。
(ステップ2)
⇒制度導入が経営にとってどのような意義があるかを確認したうえで、具体的な導入目的を設定します。
(ステップ3)
⇒経営層が制度の実施についてコミットメントする姿勢を明確にします。
フェーズ2 制度を設計する
(ステップ1)
⇒以下の7項目について検討し、具体的に制度を設計します。
①適用対象の設定
②インターバル時間数の設定
③インターバル時間を確保することによって、翌日の所定勤務開始時刻を超えてしまう場合の取扱いの設定
④インターバル時間を確保できないことが認められるケースの設定
⑤インターバル時間の確保に関する手続きの検討
⑥インターバル時間を確保できなかった場合の対応方法の検討
⑦労働時間管理方法の見直し
(ステップ2)
⇒制度の根拠規定を整備します(就業規則の改訂、労働協約の締結等)。
フェーズ3 制度を導入・運用する
(ステップ1)
⇒管理職や従業員に、制度導入の意義や制度内容等を周知します。
(ステップ2)
⇒顧客や取引先へ、制度を導入したことや制度内容を説明します。
(ステップ3)
⇒インターバル時間を確保しやすい環境づくりを進めます。
フェーズ4 制度内容・運用方法を見直す
(ステップ1)
⇒制度導入から一定期間経過後、制度の効果検証、課題等の洗い出しを行います。
(ステップ2)
⇒課題が明らかになった場合には、制度内容・運用方法の見直しを行います。
勤務間インターバル制度の導入・運用を成功させるためのポイント
①勤務間インターバル制度の本格導入前に、試行運用すること
制度内容がおおよそ確定したら、本格導入前に試行期間を設けることが有効です。
⇒試行を通じてインターバル時間数や申請手続き等の制度内容の妥当性を確認し、必要に応じて見直しを行うことにより、働き方や仕事の進め方に合った制度を導入することができます。
⇒また、導入後に留意すべきことをあらかじめ把握することができるため、円滑な運用が可能になります。
⇒試行対象となった従業員本人やその上長から意見を聴取するだけでなく、対象従業員と業務上の関わりを持つ従業員にも意見を求めるとよいでしょう。
②インターバル時間の確保に向けた職場風土を醸成すること
インターバル時間を十分に確保するためには、時間外労働を減らすことが必要です。
⇒「働く時間は有限である」との考え方に基づき、無駄な作業を洗い出し、仕事の進め方を見直す等、仕事の効率化を図りましょう。
⇒また、特定の従業員に仕事の負荷がかかっていないか等を確認し、必要に応じて仕事配分を見直すことも重要です。
⇒さらに、そうした取組の推進には、職場の理解とともに経営層の後押しが欠かせません。
⇒経営層が従業員に対して「企業全体で従業員のインターバル時間を確保する」とのメッセージを発信することが、職場風土の醸成に効果的です。
③インターバル時間の適切な把握・管理に向けた仕組を導入すること
従業員のインターバル時間を適切に把握・管理できる仕組を用意することが望まれます。
⇒タイムカード等による記録、パソコンのログイン・ログアウトの時刻といった客観的な方法で勤務開始・終了時刻を把握することに加え、勤務終了時刻から翌日の勤務開始時刻までにどれだけの時間を確保できているかが一目でわかる(自動計算される)ように勤怠管理システムを改修することが期待されます。
⇒また、もし一定のインターバル時間を確保できていない従業員がいる場合、上長にそれが自動通知される仕組を組み込むとさらに有効でしょう。
⇒なお、勤怠管理システムの改修には一定の時間・費用が必要となるケースもありますので、早めの対応が求められます。
以上となります。なお厚労省マニュアルのほかに、厚労省サイト「勤務間インターバル制度」でも、さまざまな組織の導入事例が紹介されていますので、ぜひご覧ください。
【今日のポイント】
「勤務間インターバル制度」導入は、『PDCAサイクル』を土台とした労使の話し合いの場を大切にしよう!