昨日は「障害者雇用率制度」の概要をお伝えしましたが、今日はその特例的な内容です。
「障害者雇用率制度」においては、障害者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できることとしています。
今回は、厚生労働省ホームページでもご紹介されています「1 特例子会社制度」「2 企業グループ算定特例」「3 事業協同組合等算定特例」の3つの内容をご紹介します。
1 特例子会社制度
①特例子会社認定の要件
【親会社の要件】
親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)。
【子会社の要件】
・ 親会社との人的関係が緊密であること(具体的には、親会社からの役員派遣等)。
・雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること。
・障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること(具体的には、障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置等)。
・その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること。
②特例子会社によるメリット
【事業主にとってのメリット】
・障害の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより障害者の能力を十分に引き出すことができる。
・職場定着率が高まり、生産性の向上が期待できる。
・障害者の受け入れに当たっての設備投資を集中化できる。
・親会社と異なる労働条件の設定が可能となり、弾力的な雇用管理が可能となる。
【 障害者にとってのメリット】
・特例子会社の設立により、雇用機会の拡大が図られる。
・障害者に配慮された職場環境の中で、個々人の能力を発揮する機会が確保される。
2 企業グループ算定特例
①企業グループ算定特例認定の要件
【親会社の要件】
・親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)
・親会社が障害者雇用推進者を選任していること。
【関係子会社の要件】
・各子会社の規模に応じて、それぞれ常用労働者数に1.2%を乗じた数(小数点以下は切捨て)以上の障害者を雇用していること。
ただし、中小企業については、次のア~ウに掲げる数以上の障害者を雇用していること。
ア 常用労働者数167人未満 要件なし
イ 常用労働者数167人以上250人未満 障害者1人
ウ 常用労働者数250人以上300人以下 障害者2人
・障害者の雇用管理を適正に行うことができると認められること(具体的には、障害者のための施設の改善、選任の指導員の配置等)又は他の子会社が雇用する障害者の行う業務に関し、人的関係若しくは営業上の関係が緊密であること。
・その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること。
② 企業グループ算定特例によるメリット
グループ内に障害者の就労しやすい業務を行う子会社がある場合、親事業主の責任の下、当該子会社で障害者雇用を進めることにより、グループ全体での業務効率と障害者雇用を両立させることができる。
3 事業協同組合等算定特例
①事業協同組合等算定特例認定の要件
【事業協同組合等の要件】
・事業協同組合、水産加工業協同組合、商工組合又は商店街振興組合であること。
・規約等に、事業協同組合等が障害者雇用納付金等を徴収された場合に、特定事業主における障害者の雇用状況に応じて、障害者雇用納付金の経費を特定事業主に賦課する旨の定めがあること。
・事業協同組合等及び特定事業主における障害者の雇用の促進及び安定に関する事業(雇用促進事業)を適切に実施するための計画(実施計画)を作成し、この実施計画に従って、障害者の雇用の促進及び安定を確実に達成することができると認められること。
・自ら1人以上の障害者を雇用し、また、雇用する常用労働者に対する雇用障害者の割合が、20%を超えていること。
・自ら雇用する障害者に対して、適切な雇用管理を行うことができると認められること(具体的には、障害者のための施設の改善、専任の指導員配置等)。
【特定事業主の要件】
・事業協同組合等の組合員であること。
・雇用する常用労働者の数が43.5人以上であること。
・子会社特例、関係会社特例、関係子会社特例又は他の特定事業主特例の認定を受けておらず、当該認定に係る子会社、関係会社、関係子会社又は特定事業主でないこと。
・事業協同組合等の行う事業と特定事業主の行う事業との人的関係又は営業上の関係が緊密であること(具体的には、特定事業主からの役員派遣等)。
・その規模に応じて、それぞれ次のア~ウに掲げる数以上の障害者を雇用していること。
ア 常用労働者数167人未満 要件なし
イ 常用労働者数167人以上250人未満 障害者1人
ウ 常用労働者数250人以上300人以下 障害者2人
②事業協同組合等算定特例によるメリット
個々の中小企業では障害者雇用を進めるのに十分な仕事量の確保が困難であるが、事業協同組合等を活用し、複数の中小企業が共同して障害者の雇用機会を確保することができる。
以上となります。基本的に「親会社」「子会社」の関係を前提とした制度ですので、該当される事業主の方は限られているかもしれませんが、該当される方はぜひ活用をご検討ください。
【今日のポイント】
障害者雇用率制度には「特例子会社制度」があるということだけでも知っておこう!