なぜ従業員に「階層」を意識させる必要があるのか?

 昨日は「従業員の能力開発に関わる要望」と「組織の期待」を擦り合わせる場面の必要性をお伝えしましたが、今日はその実践的な方法です。

 今日は、能力開発が実践に結び付くために「自らの階層」を意識する場面をつくることの必要性についてお伝えします。

 

 なぜ従業員に「階層」を意識させる必要があるのか?

 それは「従業員の能力開発に関わる要望」と「組織の期待」の『擦り合わせ』のために必要な要素だからです。

 

「階層」を明確にしよう!

 私が福祉分野の仕事に、長年携わってきたこともありますが、参考に福祉・介護職員を対象にしている全国社会福祉協議会「福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程テキスト」に記載されている階層は以下のとおりです。

 

初任者職員    新卒入職後1年以内の職員、他業界から福祉職場へ入職後1年以内の職員

中堅職員     担当業務の独力遂行が可能なレベルの職員(入職後概ね3~5年度の節目の職員)

チームリーダー  近い将来チームリーダー等の役割分担を担うことが想定されている中堅職員、現に主任・係長等に就いている職員

管理職員     近い将来管理者の役割を担うことが措定される指導的立場の職員、現に小規模事業管理者・部門管理者等に就いている職員

上級管理職    近い将来管理者の役割を担うことが措定される職員、現に施設長等運営統括責任者に就いている職員

 

 一般的な会社で言えば「職位」にあたり、「チームリーダー」は係長、「管理職員」は部長・課長、「上級管理職」は社長・役員といったところでしょうか。「能力開発」には、常に「階層・職位」の意識が必須になります。

 

従業員が「階層」を意識することで、「組織の期待」が伝わりやすくなる! 

 それでは、具体的な例を挙げて確認していきましょう。

 仮に「能力開発」として、介護職員・福祉職員が「感染症」を学んだとします。

 その時に「それぞれの階層の職員」が意識すべきことは、以下の内容が考えられます。

 

初任者職員

⇒「自らの感染症予防のために規則正しい生活をしよう!」「感染症の防護服の着脱方法を必ず守ろう!」

中堅職員

⇒「後輩職員に、今日学んだ感染症予防の対応を教えよう!」「自らが、施設内で感染症予防対応の模範となれるように頑張ろう!」

チームリーダー

⇒「チーム内で、感染症予防のために何ができるかを話し合う機会をつくろう!」「チームで話し合った内容を、管理職員へ提案しよう」

管理職員

⇒「それぞれのチームが感染症予防の取り組みができているか見直してみよう!」「感染症が生じたときに、拡大しないための2次的対応を確認しよう!」

上級管理職

⇒ 「各施設が感染症予防の取り組みができているか見直してみよう!」「感染症が拡大してしまったときのリスク対応を想定しておこう!」

 

 例えば管理職員が「自らの感染症予防のために規則正しい生活をしよう!」と思うこともとても大事ですが、それだけで留まってしまっては、やはり物足りないと思います。

 施設内でどのようにフィードバックしていくかということにまで考えを飛ばさなければなりません。

 

 逆に、初任者職員が「施設としてのリスクマネジメントが大切」と思うことも大切ですが、まずは「目の前のこと一つ一つ」に意識を集中させることが大事です。

 初任者職員が「将来、施設の経営者になりたいので、経営をテーマにした研修に行かせてください」と能力開発に関わる要望を申し出たとしても、組織としては「まだまだやることがあるだろう‥」と感じる場合もあるかもしれません。

 

 そのような場合も「階層」という概念があれば、「あなたは~の段階だから、まずは~を学んでほしい」という「組織の期待」を伝えることができます

 

「学んだ」ことは、実践することで身についていく!

 このように従業員が、あらかじめ階層を意識しておけば「従業員の能力開発に関わる要望」と「組織の期待」との大きな乖離を避けることができます

 

 また、少し話は逸れますが、「研修を受ける(能力を開発する)」ことで満足する従業員もいるかもしれませんが、それでは意味がありません。

 学んだことを、仕事として実践することで初めて、組織にとってもプラスになりますし、従業者本人にとってもプラスになります。

 

 それに「学んだこと」というのは、年齢を重ねるほど、ほとんど1日経てば忘れてしまいます。

 大事なポイントを抑え、それを実践し、必要な時に学んだことを振り返ることによって、初めて「実」になります

 

 その「実」が、以前紹介した「動機づけ要因」の「達成感」「仕事のやりがい」 「成長」につながっていくのです。

 

「縦」の階層だけでなく、「横」の階層も意識しよう!

 また、従業員の離職率が下がることは、当然喜ばしいことだと思いますが、同時に新たな課題に備えることが必要になってきます。

 

 それは、「縦」階層だけでなく、「横」階層も意識することです。

 組織の一般的な構造を考えると、「初任者職員」⇒「中堅職員」⇒「チームリーダー」⇒「管理職員」⇒「上級管理職」と進むにしたがって、段々と人数が減っていきます。誰もが「管理職員」「上級管理者」になれるわけではありません。

 

 また、従業員によっては「管理職員」などになることを希望しない方もいます。

 その従業員はとても優秀だとしても、「管理職になることで過剰な負担になる」「自らの専門性を極めたい」「昇給が大幅に上がるよりは、自らのペースで働くことを大事にしたい」などと望んでいるのであれば、その希望を実現させる方が、従業員も組織も「Win-Win」の関係になります。

 

 そのためには、組織の中で幅広い役割を担う「ゼネラリスト」という位置づけでなく、階層を横に拡げ「スペシャリスト」という位置づけもつくっていきましょう

 

 今までのように「出世街道」だけが主たるものでなく、「ワークライフバランスを重視する」「一つの組織に留まるより複業したい」「自らの専門性を高め、それを組織だけでなく、社会にも役立てたい」など、さまざまな働き方が認められてきています。

 いろいろな働き方を受け入れることができれば、ピラミッド構造による「縦」の階層に縛られることもなくなっていくと思います。

 

 

今日のポイント

「能力開発」には、常に従業員に「階層」意識を持ってもらおう!