労災(労働者災害補償保険法)の「通勤災害」に該当するのか?

 昨日までは「職業能力の開発・促進」についてお伝えしましたが、今日・明日は補足的な情報「豆知識」と題して、お伝えします。

 本日は「通勤災害」に関しての内容です。

 

 仕事をされている方は、仕事が終わってから、そのまま直行で職業訓練学校などに行き、帰宅するという方が多いと思います。

 もしくは、自宅から職業訓練学校などに通学し、訓練終了後、直行で仕事に向かう方もいると思います。

 そのような場合に、職業訓練学校から自宅(もしくは職場)へ行く途中に負傷した場合に、「通勤災害」として労災(労働者災害補償保険法)の対象として、療養費などが補償されるかということです。

 

「通勤災害」に対象となるには必要な条件があります

 原則、上記の場合は「通勤災害」になりますが、どのような場合でも該当するとは言い切れません。その状況によって判断されます。

 そのことを知っていただくためには、まず「通勤災害」の基本的な内容を抑えておく必要があります。

 

「通勤災害」が労災の対象になる要件

 まず、法律上「通勤災害」は、「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」と明記されています。

 

 そして、その「通勤」は、労働者が、就業に関し、次の①~③に掲げる移動を、「合理的な経路及び方法」により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

住居と就業の場所との間の往復

例:自宅と会社の往復

厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

例:本業勤務先から副業勤務先への移動

第1号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

例:単身赴任中の労働者が、会社から赴任先住居へ一旦帰宅し、その後帰省先住居へ移動

 

 この上記①~③が「通勤災害」に該当する基本形です。

 実際には、労働者災害補償保険法の第7条第2項に明記されています。

 しかし、上記内容では「就業後に職業訓練学校に通う」などの内容は含んでいません。実際には次の第7条第3項に明記されています。

 

「通勤災害」の逸脱・中断とは?

まずは、実際の条文を確認します。

 

●労働災害補償保険法第7条第3項

3 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第1項第3号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

 

少し分かりにくいので、順を追って確認しましょう

ポイント1 

「前項各号に掲げる移動の経路を逸脱」は、上記①~③の合理的な経路及び方法から逸脱している(外れている)ような場合です。

 

ポイント2 

「同項各号に掲げる移動を中断」は、上記①~③の移動を中断(一旦止める)ような場合です。

例えば「通勤途中の居酒屋で、友人と数時間過ごした」などの場合です。

 

まず、この「ポイント1」「ポイント2」は、「通勤災害に該当しない」ということです。

これが、まず原則です。そして以降のポイントがその例外です。

 

就業前後の通学が「通勤災害」となる根拠

ポイント3 「当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行う

この内容は、労働者災害補償保険法施行規則第8条に定めがあります。この条文の第2号に、はじめて「職業訓練など」の明記が出てきます。

 

●労働者災害補償保険法施行規則第8条

(日常生活上必要な行為)

第八条 法第七条第三項の厚生労働省令で定める行為は、次のとおりとする。

一 日用品の購入その他これに準ずる行為  

二 職業訓練、学校教育法第一条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

三 選挙権の行使その他これに準ずる行為 

四 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為  

五 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)

 

 

ポイント4 「最小限度のものである場合」 

つまり、職業訓練などへの通学であっても、「日常生活上必要な行為ではない」寄り道をした場合などは除外対象になってくるということです。

 

ポイント5 「当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない」 

つまり、「職業訓練の受講時間」は、ここで示す「中断の間」ですので、「通勤災害」の対象にはなりません

 

 まとめると「ポイント3」の行為に該当し、「ポイント4」の要件を満たし、「ポイント5」の時間を除いたものが「通勤災害」に該当していきます。

 

 これを「職業訓練」にあてはめると、「職場⇒職業訓練学校⇒自宅のルートの時間の中で、日常生活上必要な行為以外のことは何も行わない」場合に、「職業訓練学校の受講時間を除いたもの(つまり、職業訓練学校を経由した通勤時)」は「通勤災害」に該当するということです。

 

 ただし、通勤災害は、本当にケースバイケースで判断されますので、明確な線引きが難しいです(例えば、喫茶店に40分程度いた場合は、通勤災害に該当しない等)。

また「職業能力の開発向上に資するもの」が対象になりますので、客観的に見てそのような性質の訓練である必要があります。

 

 しかし、通勤災害かどうかを最初から意識して、何かを行動するということは、日常生活の中では少ないと思います。

 そのため、次の「今日のポイント!」だけ抑えておけば良いと思います!

 

 

今日のポイント

もし就業前後に、職業訓練通学時に負傷した場合は、原則「通勤災害」の対象となるので、勤務先へ申し出よう!