妊娠・出産等に関するハラスメントを定める法律は「男女雇用機会均等法」
今日から3日間は「出産・育児に関するハラスメント」です。
ハラスメントについては、先々月のブログで特集しておりますので、概要については、その時のブログに委ねさせていただきます。
今回は「出産・育児等」に特化している内容のみお伝えしますので、ご了承ください。
今日は「妊娠・出産等に関するハラスメントで事業主が留意すべきこと」です。
妊娠・出産に関することですので「女性労働者」に対してのハラスメントを防止する趣旨の内容です。
妊娠・出産等に関するハラスメントを定める「男女雇用機会均等法」から2つの条文をご紹介しますので、事業主の皆様は以下2点についてご留意ください。
留意点1 事業主は不利益な取扱いをしてはならない
●男女雇用機会均等法第9条第3項
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
つまり、事業主は「厚生労働省令で定めるものを理由」により「解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」ということです。
ここでは、厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」で示されている『厚生労働省令で定めるもの』と『不利益取り扱いの例』をご紹介します。
(厚生労働省令で定める理由)
1 妊娠したこと。
2 出産したこと。
3 産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと⼜は産後の就業制限の規定により就業できず、 若しくは産後休業をしたこと。
4 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(⺟性健康管理措置)を求め、⼜は当該措置を受けたこと。
5 軽易な業務への転換を請求し、⼜は軽易な業務に転換したこと。
6 妊娠⼜は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと⼜は労働能率が低下したこと。
※ 「妊娠⼜は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻(にんしんおそ)、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠⼜は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいいます。
7 事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間⼜は1⽇について法定労働時間を超える時間について労働しないことを請求したこと、時間外若しくは休⽇について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと⼜はこれらの労働をしなかったこと。
8 育児時間の請求をし、⼜は育児時間を取得したこと。
9 坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出若しくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと⼜はこれらの業務に従事しなかったこと。
(不利益取り扱いの例)
1 解雇すること。
2 期間を定めて雇⽤される者について、契約の更新をしないこと。
3 あらかじめ契約の更新回数の上限が明⽰されている場合に、当該回数を引き下げること。
4 退職⼜は正社員をパートタイム労働者等の非正規雇⽤社員とするような労働契約内容の変更の強要を⾏うこと。
5 降格させること。
6 就業環境を害すること。
7 不利益な自宅待機を命ずること。
8 減給をし、⼜は賞与等において不利益な算定を⾏うこと。
9 昇進・昇格の⼈事考課において不利益な評価を⾏うこと。
10 不利益な配置の変更を⾏うこと。
11 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと。
留意点2 事業主は必要な措置を講じなければならない
●男女雇用機会均等法第11条の3第1項
第十一条の三 事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
つまり、労働者の就業環境が害されることがないよう、事業主は「雇用管理上の措置を講じなければならない」ということです。
そして、この講じなければいけない措置は、パワーハラスメントに関する講じなければいけない措置で掲げる10項目の措置と同じになっています(以前ご紹介したブログをご覧ください)が、妊娠・出産等に関するハラスメントについては「業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置」という項目が加わるため、全11項目となります。
「業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置」については、具体例として以下のようなものが挙げられます。
・妊娠等した労働者の周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の⾒直しを⾏うこと。
・業務の点検を⾏い、業務の効率化などを⾏うこと。
明日は、「育児休業等」に関するハラスメントで事業主が留意すべき内容です。
【今日のポイント】
妊娠中や出産後も働きやすい環境をつくるための事業主のみなさまの配慮は、会社・事業所の経営向上にもつながっていく!