「健康保険被保険者資格を喪失」とは?
一昨日は「出産育児一時金」、昨日は「出産手当金」についてお伝えしましたが、今日はその応用的な内容です。
健康保険資格を喪失した場合です。まずは、どのような場合なのか法律で確認していきましょう!
●健康保険法第36条
(資格喪失の時期)
第三十六条 被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(その事実があった日に更に前条に該当するに至ったときは、その日)から、被保険者の資格を喪失する。
一 死亡したとき。
二 その事業所に使用されなくなったとき。
三 第三条第一項ただし書の規定に該当するに至ったとき。
四 第三十三条第一項の認可があったとき。
第2号は主に「退職したとき」、第3号は「所在地が一定しない事業所に使用される者などの健康保険に適用されない内容となった」などです。また第4号は「会社が健康保険の適用事業所でなくなったとき」です。
今日は、健康保険被保険者の資格を喪失したときに「出産手当金」「出産育児一時金」が支給されるかどうかという内容です。
被保険者資格喪失時の「出産手当金」支給条件
健康保険法第104条に明記されています。
●健康保険法第104条
(傷病手当金又は出産手当金の継続給付)
第百四条 被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。
条文を紐解いていくと、以下の2つの条件を満たしたときに、健康保険資格を喪失していても「出産手当金」が支給されます。
条件① 資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者であること
ただし、以下の留意事項があります。
まず「任意継続被保険者の資格喪失者」については、「資格喪失日」は「任意継続被保険者の取得日」です。
また「引き続き1年以上の被保険者期間」とは、現在の会社ではなく、それ以前の加入期間から、間が空かずに連続加入していた期間が、1年以上ある場合も含みます。しかし、任意継続被保険者の期間、共済組合組合員の加入期間は除きます。
「任意継続被保険者」とは、被保険者資格喪失後も引き続き2年を限度に、健康保険の適用を受ける者です。
「共済組合」とは、公務員やその家族の方を対象とした保険です。
条件② 資格喪失時に出産手当金の支給を受けていること
「支給を受けることができる状態にある場合」も含みます。
具体的には「事業主から報酬を受けているため出産手当金が停止されていた」などです。
被保険者資格喪失時の「出産育児一時金」支給条件
健康保険法第106条に明記されています。
●健康保険法第106条
(資格喪失後の出産育児一時金の給付)
第百六条 一年以上被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後六月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができる。
条文を紐解いていくと、以下の2つの条件を満たしたときに、健康保険資格を喪失していても「出産育児一時金」が支給されます。
条件① 資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者であること
上記「出産手当金 条件①」と同じ留意事項です。
条件② 資格を喪失した日後6カ月以内に出産したこと
事実として6カ月以内であることが必要です。つまり、出産予定日が6カ月以内でも、出産が6カ月経過後である場合は支給されません。
そして、ポイントを挙げます。
以下の内容は、家族への支給・国民健康保険からの支給対象となる「出産育児一時金」のポイントです(「出産手当金」は家族支給なし、国民健康保険支給も原則なし)
ポイント① 被保険者の資格喪失後にその被扶養者だった家族が出産しても、家族出産育児一時金は支給されません。
ポイント② 資格喪失後、被扶養者となった場合は、「資格喪失後の出産育児一時金」または「家族出産育児一時金」のどちらかを選択して受けることとなり、二重に受けることはできません。
ポイント③ 資格喪失後、国民健康保険の被保険者となった場合は、「資格喪失後の出産育児一時金」または「国民健康保険」のどちらかを選択して受けることとなり、二重に受けることはできません。
今日の内容はとても複雑です。
また、幾つかの条件が重なったときに該当するような例外的なことですので、頭の片隅にイメージいただけたらと思います。
【今日のポイント】 資格喪失後の内容も含めて「出産育児一時金」と「出産手当金」の違いを抑えておこう!