今日は具体例を挙げて「年次有給休暇」のルールを確認していきます!
「繰越日数」を理解しよう!
昨日と同じ労働条件の労働者を例に挙げます。
「令和3年4月1日入社し、継続勤務・出勤率8割の条件をクリアし続けた労働者」です
その労働者が、毎年「年次有給休暇」を7日間(7労働日)消化した場合を確認していきます。
昨日の項目に「基準日時点の有給休暇日数」「(次基準日までに)消化した有給休暇」「(次期への)繰越日数」「(当期で)時効消滅する年次有給休暇」の項目を追加します。
勤続勤務年数 | 基準日(付与される月日) | 当期付与日数 | 基準日時点の年次有給休暇日数 | (次基準日までに)消化した年次有給休暇 | (次期への)繰越日数 | (当期で)時効消滅する年次有給休暇 |
6カ月 | 令和3年10月1日 | 10労働日 | 10労働日 | 7労働日 | 3労働日 | 0 |
1年6カ月 | 令和4年10月1日 | 11労働日 | 14労働日 | 7労働日 | 7労働日 | 0 |
2年6カ月 | 令和5年10月1日 | 12労働日 | 19労働日 | 7労働日 | 12労働日 | 0 |
3年6カ月 | 令和6年10月1日 | 14労働日 | 26労働日 | 7労働日 | 14労働日 | 5労働日 |
4年6カ月 | 令和7年10月1日 | 16労働日 | 30労働日 | 7労働日 | 16労働日 | 7労働日 |
5年6カ月 | 令和8年10月1日 | 18労働日 | 34労働日 | 7労働日 | 18労働日 | 9労働日 |
6年6カ月 | 令和9年10月1日 | 20労働日 | 38労働日 | 7労働日 | 20労働日 | 11労働日 |
7年6カ月 | 令和10年10月1日 | 20労働日 | 40労働日 | 7労働日 | 20労働日 | 13労働日 |
かなり複雑な表になってしまったので、赤字のみ意識してください(表が見にくい場合は、以下の文章を読んでいただくだけでも大丈夫です)。
まず一番右の欄の「時効消滅した有給休暇」です。「年次有給休暇」は取得してから2年で消滅します。
例えば「令和6年10月1日」時点で、年次有給休暇は「12労働日(前期からの繰越日数)」+「14労働日(当期付与日数)」=「26労働日(年次有給休暇数)」ありますが、もし「令和6年10月1日から令和7年9月30日までの1年間」で、「7労働日」だけの消化であれば、時効消滅が早い年次有給休暇から消化した方が良いので、「12労働日(前期からの繰越日数)」のうち「7労働日」は消化できますが、「5労働日」は残ってしまいます。
しかし、この「5労働日」は前期からの繰り越し分、つまり「令和5年10月1日」に取得したものですので、「令和7年9月30日」が終わった時点で、2年が経過し消滅します。したがって「5労働日分」は休みを取ることなく、消えてしまうということです。次期(令和7年10月1日~令和8年9月30日)へ繰り越すことができるのは、令和6年10月1日に取得した「14労働日」のみです。
また、年次有給休暇は2年で消滅しますので、次期へ繰り越すことできる最大日数は「20労働日」です。さらに、当期付与日数の最大日数は「20労働日」ですので、両方を足した「40労働日」が、基準日時点で取得できる最大の年次有給休暇日数となります。
ちなみに過去のブログでも度々お伝えをしていますが、「消滅時効2年」「繰り越し最大20日」はあくまでも労働基準法の最低基準ですので、労働者にとって有利な条件に変更することもできます。
「出勤率が8割未満」の場合を理解しよう!
今度は、前記の労働者が「令和6年10月1日から令和7年9月30日まで」に「出勤率が8割未満」だった場合を確認していきます(それ以外の期間は、出勤8割以上)。
勤続勤務年数 | 基準日(付与される月日) | 当期付与日数 | 基準日時点の年次有給休暇日数 | (次基準日までに)消化した年次有給休暇 | (次期への)繰越日数 | (当期で)時効消滅する年次有給休暇 |
6カ月 | 令和3年10月1日 | 10労働日 | 10労働日 | 7労働日 | 3労働日 | 0 |
1年6カ月 | 令和4年10月1日 | 11労働日 | 14労働日 | 7労働日 | 7労働日 | 0 |
2年6カ月 | 令和5年10月1日 | 12労働日 | 19労働日 | 7労働日 | 12労働日 | 0 |
3年6カ月 | 令和6年10月1日 | 14労働日 | 26労働日 | 7労働日 | 14労働日 | 5労働日 |
4年6カ月 | 令和7年10月1日 | 0 | 14労働日 | 7労働日 | 7労働日 | 0 |
5年6カ月 | 令和8年10月1日 | 18労働日 | 25労働日 | 7労働日 | 18労働日 | 0 |
6年6カ月 | 令和9年10月1日 | 20労働日 | 38労働日 | 7労働日 | 20労働日 | 11労働日 |
7年6カ月 | 令和10年10月1日 | 20労働日 | 40労働日 | 7労働日 | 20労働日 | 13労働日 |
ポイントは「出勤率8割未満」の期間は、その期間終了日の翌日の「基準日」に年次有給休暇が付与されません。
上記では「令和6年10月1日から令和7年9月30日まで」に「出勤率が8割未満」ですので、その期間の終了日の翌日の「基準日」の「令和7年10月1日」に年次有給休暇は取得できません。
ただし、勤続勤務をしていれば加算要件は途切れませんので、「令和7年10月1日から令和8年9月30日まで」の1年間に「出勤率8割以上」を達成すれば、「令和8年10月1日」に前期繰り越し分を除き、新たに取得できる年次有給休暇数は、勤続勤務年数「5年6カ月」となり「18労働日」となります。
取扱いが複雑・・・すべての社員の「基準日」を統一することができる!
説明は以上ですが・・やはりとても複雑です。
複雑な原因は、まず「入社した月日」と「基準日(年次有給休暇の取得日)」は基本的にずれています。今回例を挙げた内容で言えば「4月1日」と「10月1日」です。
さらに、社員は必ず「4月1日」に入社するわけではありませんので、「5月1日」に入社すれば、その社員の「基準日(年次有給休暇の取得日)」は「11月1日」になってしまいます。社員によって、年次有給休暇を取得する日がバラバラですと労務管理がとても複雑になります。
それを解消するため「斉一的取扱い」というものがあります。 「基準日(年次有給休暇の取得日)」を繰り上げてしまうということです。
例えば、法定では「4月1日」から6カ月を経過した「10月1日」でないと年次有給休暇は取得できませんが、「4月1日」に6カ月全期間出勤したものとして扱い、最初から年次有給休暇「10労働日」を付与してしまうなどです。その場合、入社後1年経過した「次年度の4月1日」は1年6カ月経過したものとして扱い「11日労働日」が付与されます。
この場合、労働者にとっては有利な取扱いになるため問題となりません(当然不利な取扱いとして、「基準日」を繰り下げるということはできません)。
今回紹介した内容は、あくまで法定の「年次有給休暇」のルールですので、この内容より労働者にとって有利な内容であれば、もちろん問題ありません。
昨日と今日の内容はかなり複雑です・・・。あまり分からなくても、次に示す「今日のポイント」は実践しましょう!
今日のポイント
法律上、年次有給休暇は2年で消滅する・・・年次有給休暇が、時効消滅しないようにしよう!