昨日は就業規則の「不利益変更」についてでしたが、今日は「就業規則」と「他の労働規範」とが異なった定めをしていた場合に、どちらが優先されるかということです。

 例えば「就業規則」では「時給1,300円」と定めているが、「労働契約」では「時給1,200円」と定めている場合に、どちらが本当なのかということです。

 答えは「原則就業規則が優先される」です。

 

原則は「就業規則>労働契約」の根拠

 まず「労働契約」の意味を確認しましょう。

 労働契約は「個々の労働者が、使用者との間で、労働時間、賃金等の労働条件について取り決めた契約」ということです。

 

 なお、「労働契約」の内容は書面で確認することが望ましいとされていますが、義務ではありません。労働契約が就業規則などの内容に準じていれば、個別に労働契約の内容を書面で確認していない方もいらっしゃると思います。

 「就業規則」は『使用者側が労働者全体(場合により一部の労働者全体)に守るべきルールを示したもの』と言えますが、「労働契約」はあくまで『使用者と労働者の個々の関係を締結したもの』です。

 つまり、『個々で約束した内容』より『全体に示したルール』の方が優先されるということです。

 

 その根拠ですが「労働契約法」第12条で定められています。

 

●労働契約法第12条

(就業規則違反の労働契約)

第十二条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

  冒頭の時給の例で置き換えると、「労働契約」で「時給1,200円」と定めている部分は就業規則の定める基準に達していないので無効となり、「就業規則」の「時給1,300円」が適用されます。これがまず原則です。

 

仮に使用者の都合で「就業規則は時給1,300円だけど、今は経営が厳しいので時給1,200円でお願い!」というのは、就業規則の基準に達していないので無効となります。「時給1,200円」にするには、就業規則を変更しなければなりません。

 

例外的に「労働契約>就業規則」の時

 そして、例外的に「労働契約」が優先される場合です。前記労働契約法第12条の反対解釈になります。

 つまり、「労働契約の中で、就業規則で定める基準に達していれば」個別の契約内容が優先されるということです。

 

 引き続き、時給の例で考えると、「就業規則」で「時給1,300円」と定めていても、「労働契約」で「時給1.400円」で合意していれば、就業規則で定める基準に達している(基準を上回っている)ので、労働契約で合意している「時給1,400円」になるということです。

 

「就業規則」と「他の労働規範」との関係は?

 続いて、労働基準法第92条の内容をご確認ください。

 

●労働基準法第92条

(法令及び労働協約との関係)

第九十二条 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。

 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。

 この条文から、「就業規則」より「法令」「労働協約」が優先されます。

 

 「法令」というのは、「法律や省令・政令などの総称」です。

 「労働協約」というのは、「使用者と労働組合が団体交渉などをした結果、合意した内容を書面にまとめたもの」です。

 

 「法令」が「就業規則」より優先されるというイメージしやすいと思いますが、「労働協約」の場合、労働組合に入っていない労働者にも適用されるかが問題になります。

 原則、労働組合の組合員のみに適用されますが、労働組合法第17条に次のような定めがあります。

 

●労働組合法第17条

(一般的拘束力)

第十七条 一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。

 つまり、「労働協約」によって、同種の労働者4分の3以上に適用されれば、その他4分の1の労働者にも適用されるということです。

 

「就業規則」と「他の労働規範」との優先関係のまとめ

 法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約 になります。

 

 しかし、まずは「就業規則」は「労働契約」より優先関係にある原則を覚えておきましょう!

 

 

今日のポイント 

就業規則」の内容を知らなければ、「労働契約」で不利な条件を求められても気づくことができない!