「労働者災害補償保険」の補償を受けるには対象要件を満たすことが必要

 昨日までは、パワハラの被害を受けた時の窓口として「総合労働相談コーナー」(厚生労働省ホームページ)をご紹介しました。

 

 今日は、「パワハラで療養・休業を余儀なくされた場合の補償」に関しての内容です。

  次に示す「要件1~要件3」の内容をすべて満たせば「労災(労働者災害補償保険)」の対象になります。それでは、その要件を確認していきましょう。

  なお、大前提として、所属する事業所が労災の適用事業であることが必要(一定の要件に当てはまる個人経営の農林水産業などは任意加入)です。

 

要件1 認定基準の対象となる精神障害を発病していること

 国際疾病分類第10回修正版(ICD-10)第Ⅴ章「精神および行動の障害」に分類される精神障害であって、認知症や頭部外傷などによる障害(F0)およびアルコールや薬物による障害(F1)は除きます。代表的なものは、うつ病・急性ストレス反応などです。

 

要件2 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6カ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

 「業務による強い心理的負荷」が何かというと、「業務による心理的負荷評価表」という評価表があり、「仕事の失敗、過重な責任の発生等」「仕事の量・質」などの出来事の類型を設定し、その出来事の内容に応じ、心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」の3段階で評価し、「強」と評価されたということです。

 

  とは言ってもイメージがつかめないと思いますので、具体的に評価表の出来事の類型の「パワーハラスメント」の「強」の内容を見ていきましょう。

  次の厚生労働省「業務による心理的負荷評価表(厚生労働省ホームページ」に記載があるような内容に該当し、他の要件を満たせば、労災認定されるということです。ちなみに「パワーハラスメント」の類型は、令和2年6月に新たに加えられたものです。

 

●出来事の類型「パワーハラスメント」、心理的負荷の強度「強」

○上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた

【「強」である例】

・上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合

・上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合

・上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合

・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃

・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

・心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

 

  なお、複数の出来事が関連して生じた場合には、その全体を1つの出来事として評価します。

 また、例えば「治療を要さない程度の暴行による身体的攻撃を受けた」は、「パワハラの『中』」と評価されますが、それとは関連なく「顧客から無理な注文を受けた」などの他の出来事で、心理的負荷がかかる出来事が複数生じた際は総合的に判断され、「強」となる場合もあります(必ず「強」となるわけではありません)

 

 そして「パワーハラスメント」の項目に該当しなくても、長時間労働・セクハラ等は、他の「出来事の類型」に該当してきますので、まずはこのような評価表があるということを知っていただければ良いと思います。

 

要件3 業務以外の心理的負荷や個体的要因により発病したとは認められないこと

 ただし「業務以外の心理的負荷(自分や家族の出来事・金銭関係など)」の強度を評価し、強い心理的負荷が複数重なった場合などは、それが発病の原因であるといえるか、慎重に判断されます。

 また、精神障害の既往歴やアルコール依存状況などの個体的要因については、その有無とその内容について確認し、個体的要因がある場合には、それが発病の原因であるといえるか、慎重に判断されます。

 

 以上3要件に該当すれば、労災の対象になります。まずは、大まかなイメージを持っていただき、強いパワハラであれば、労災に該当する」ということを理解いただければ良いと思います。

 

 

今日のポイント

 時代の流れとともに「パワハラ防止」がますます徹底されている。労災の「パワハラ」類型の追加は、まさにその象徴!