「指導」に必要な3つのポイント
昨日のブログで「指導」と「解決」の関係性が大事とお伝えしましたが、今日からしばらくは、そのことを掘り下げていきたいと思います。
まず今日は「指導」についてです。
私が考える「相手への指導」で重要なことは、『はっきり』『簡潔』『事実だけ』の3つです。以下、詳しくご紹介します!
ポイント1 『はっきり』伝える
相手が確実に理解できるように『はっきり』と伝えるということです。
状況にもよりますが、ある程度の厳しさを持って伝えるべきだと考えます。
「それだけ大切な内容を伝えていること」を相手に感じ取ってもらう必要があるからです。指導をしなければ、組織にも悪影響を与えますし、他の従業員・職員にも納得感を得られないことにもつながります。
ポイント2 『簡潔』に伝える
「時代の流れとともに、厳しい指導ができなくなった」と言われますが、ある程度は間違ってないと思います。しかし、「厳しい指導ができないか」と言えば必ずしもそうではないと私は思います。
暴力・暴言は言語道断ですが、「厳しい指導」が問題なのではなく、「厳しい指導を通じて、相手にとってマイナスの内容を伝える恐れがあること」に問題があると思います。
それを避けるために『簡潔』に伝える必要があるということです。
具体的には、指導に時間をかけるのではなく、必要なことをだけをはっきりと簡潔に言えば良いということです。
なぜなら、指導に時間をかけるほど、余計な言葉を上乗せしてしまうからです。
「言葉がきつくなる」「説教じみる」「不満を言う」「侮辱する」「理由を述べる」などの内容です。厳しい指導そのもののパワハラのリスクよりは、その言葉の上乗せにパワハラのリスクがあるはずです。
いきなり暴言を吐くことは、現在では少なくなっているはずで、むしろ言葉の上乗せが暴言につながることが多いのではないでしょうか。多くを話す必要があるのであれば、問題の解決を一緒に取り組むという姿勢へと切り替えるべきです。
もちろん何回も同じ過ちをする部下もいると思いますが、その際は面倒かもしれませんが、同じ内容の指導を繰り返すべきだと思います。その場合でも決して、言葉の上乗せをすべきではないと思います。
ポイント3 『事実だけ』伝える
事実ではないことを、つい言ってしまうからです。ここで使用する「事実」は「誰もが認識できる事実」と捉えてください。
つまり、指導の内容が「上司の指導で伝えた言葉が、誰もが間違っていないと認識できることだけを伝える」ということです。
以前例に挙げた、遅刻の多い部下だとすれば「会社のルールは8時30分までの出社だから、それまでに必ず出社してください」とだけ言うことです。そうであれば「間違ったことを言っている」という人は誰もいないと思います。
なぜその必要があるのでしょうか?
一人でも違う認識をさせる指導の言葉というのは、上司(指導する側)の主観が潜んでいる恐れがあるからです。
指導は『事実だけ』を。原則「意見」は伝えない。
例えば「だらしない!遅刻しないでください!」と指導したら、「だらしない」という「意見(つまり発言者の主観が潜んでいる言葉)」は言うべきではないということです。
「朝の遅刻以外では時間を守る」かもしれないですし、本人が主体的に「夜眠れないことを克服するために治療に励んでいる」としたら、それは「だらしない」ではないからです。昨日のブログでも触れましたが、実際に「遅刻をする」本当の理由は分からないことが多いからです。
上記のことを踏まえれば、「会社のルールを守ってください」ということだけを『はっきり』と『簡潔』に伝えるということです。
「意見」は『肯定的』に伝えよう!
しかし、実際には『事実だけ』を伝える場面は限られており、「意見」を伝えなければならない時が多いと思います。
「遅刻をする」は就業規則を遵守していない事実そのものですので、『事実だけ』伝えれば良いと思います。
一方で「この資料は分かりにくい!」と伝える場合、『分かりにくい』は意見(発言者の主観)です。たとえ、誰が見ても分かりにくい資料だったとしてもです。基準があるものではないからです。
このような「意見」を伝える場合は、肯定的に伝えましょう!
厳しい指導は「高い目標へ導くこと」である
例えば「もっと分かりやすく伝えるような資料をつくってほしい!」「とてもいい資料です!でも〇〇さんなら、もっといける!」などですが、このような伝え方をすると「優しい指導なのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし「優しい指導」か「強い言葉での指導」のどちらが良いかというのは、結局のところは分かりません。なぜなら、それを受け止める相手によって判断されるからです。
また「優しい」と「厳しい」は必ずしも反比例するものでもありません。「優しい口調」で高い目標を言われた方が、「厳しい口調」で叱られるよりも「厳しい」と感じる方もいると思います。
つまり厳しい指導というのは「(その人にとって)高い目標へ導くこと」であり、その伝え方に画一した方法はないと思っています。
ただ一般論として、相手に伝えるのであれば、その「高い目標」がダイレクトに伝わる肯定的な表現が適しているということです。
『肯定的』に伝える上で留意いただきたいこと
また誤解がないようにお伝えしたいのですが、「肯定的に伝えれば、それで良い」というわけではないということです。
例えば「『だらしない』などと言った後に、肯定的な言葉を伝える」「長い説教の最後に、肯定的な言葉を伝える」などは避けていただきたいということです。
上記のようなことは、指導が得意な方にある傾向かもしれませんが、社労士の立場としては「労働施策総合推進法」 の目的にそぐわない指導になりかねないからです。
99人が「だらしない」と言われ、発奮し成長したとしても、1人がその「だらしない」という言葉で立ち直れなくなることもあるからです。
もちろん「だらしない」と言わなくても、誰が指導しても傷つきやすい相手ということもあるかもしれません。しかし、少なくとも立ち直れないこととの因果関係を追求されるような言葉は発するべきではないと考えます。
また指導に自信があればある相手ほど、指導された側は「本当のことを言えない」ということも多いからです。
大切なのは「指導」から「解決」への切り替え
最後になりますが、『事実だけ』を伝えることは、「指導」から「解決」への切り替えがしやすいです。遅刻の例で言えば、「だらしない」と言っておきながら、「遅刻を一緒に改善していきましょう」と言ったところで説得力がなくなるからです。部下の信用を取り戻すのに時間がかかってしまいます。
また、「だらしない」と言われたら、部下も気が引けてしまい、問題を解決するための真実を打ち明けないことにもつながります。 「会社のルールを守ってください」ということだけを言えば、次の話は「どのように解決していこうか」と展開がしやすいはずです。
『はっきり』『簡潔』『事実だけ』ぜひ参考にしてください!
今日のポイント
厳しい指導をすることに、臆病になり過ぎない。相手を「高い目標へ」導いていこう!