昨日は、パワーハラスメント対策の事業主の義務についてお伝えしましたが、今日は、労働者が果たすべき役割について触れたいと思います。

労働者の果たすべき役割は小さいのか?

 「労働施策総合推進法」は、労働者の果たすべき役割について、以下のように定めています。

 

●労働施策総合推進法第30条の3第3項・第4項 

 事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。

 労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。

 

 「パワーハラスメントをしないように最善の注意を図り、事業主に協力しなさい」というようなことです。

   当然パワーハラスメントをしてはいけないということですが、「他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない」という表現は、事業者がハラスメント対策を講じなければならないという表現に比べると、労働者が果たすべき役割はむしろ小さいようにも思えます。

 そうであれば、パワーハラスメント対策について、労働者が果たすべき役割は、事業者が果たすべき役割より小さいのでしょうか?

 

法律の「義務」と「努力義務」の違いを捉えよう!

 法律には「~しなければならない」「~するよう努めなければならない」「~するよう努める」などの表現があります。記載した表現の中では「~しなければならない」は義務であり、「~するよう努めなければならない」は努力義務ですので、「~しなければならない」の方が拘束力が強くなります。

  一方で、「~しなければならない」と定めるのであれば、その内容を明確にしなければなりません。労働施策総合推進法であれば、事業主が講じなければならないことは「必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」です。その措置の具体的なものとして、指針の中でも定められているのです。

 つまり、「具体的な内容も定めているのだから、事業主はその措置を講じなさい」ということです。

 

労働者の果たすべき役割はむしろ大きい!

  しかし「パワーハラスメントをしてはいけない」と言い切ることは難しいです

 なぜなら、以前このブログでも紹介しましたが、パワーハラスメントかどうかは、相手や周りの立場に立って、様々な要素によって総合的に判断されるもので、その内容をあらかじめ明確にすることができないからです。パワーハラスメントの防止・解決には、画一的なものはなく、事業主・労働者の状況に応じた対応が求められます。

 だからこそ法律でも、事業主自らの労働者に対する言動に必要な注意も努力義務となっています。そのように考えると、「他の労働者に対する言動に必要な注意を払う」という努力義務というのは義務よりも拘束力が弱いと理解できます。

 しかし、「努力義務」を法律の側面だけで理解するのではなく、その言葉通り、正に努力を続ける義務であり、一人ひとりの努力の積み重ねがあってこそ「パワーハラスメント防止」につながる社会が実現できるものだと思います。だからこそ、労働者の果たすべき役割はむしろ大きいのです!

 令和2年6月の法改正は、事業主のパワーハラスメント対策を講じることが主ではありますが、ぜひ他人事と捉えるのではなく、働く方一人ひとりが「パワーハラスメント防止」の意識を深める機会となることを願っています。

 

 「ハラスメントと法律」については、今回で終了です。

 明日からは、パワーハラスメント防止の努力を実践するために「パワハラ加害者とならないために」という視点から掘り下げていきます!

 

 

今日のポイント

 労働者一人ひとりが努力義務を果たすこと。その努力の積み重ねこそが「パワーハラスメント防止」につながる!